「ストレスチェックって何をするの?」「産業医がいないと実施できないの?」——ストレスチェック制度は2015年に義務化されてから10年以上が経ちますが、まだ対応に迷っている企業も少なくありません。本記事では、ストレスチェックの基本から実施手順・産業医の役割まで詳しく解説します。
ストレスチェック制度とは
ストレスチェック制度とは、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐため、従業員自身がストレスの状態を把握し、必要に応じて産業医等による面接指導を受けられる仕組みです。2015年12月に労働安全衛生法に基づき義務化されました。
「会社が従業員のストレス状態を把握する」のではなく、あくまで従業員自身が自分のストレス状態を知ることが主目的です。結果は本人の同意なく会社に開示されることはありません。
実施義務は何人から?
ストレスチェックの実施義務は、常時50人以上の労働者を使用する事業所に課されています。年1回以上の実施が必要です。2028年4月1日からは、50人未満の事業所にも実施が義務付けられます。
| 事業所規模 | 実施義務 | 実施頻度 |
|---|---|---|
| 常時49人以下 | 努力義務 (2028年4月1日から義務) | 現在は推奨 (義務化後は年1回以上) |
| 常時50人以上 | 義務 | 年1回以上 |
現在は努力義務の50人未満の事業所も、2028年4月1日から実施が義務になります(詳しくはこちら)。義務化を待たずに始めておくと、メンタルヘルス不調の早期発見・予防につながります。
実施の流れ
実施方針・体制の決定
衛生委員会でストレスチェックの実施計画を審議。実施者(産業医等)・調査票・スケジュールを決定します。
従業員へ調査票を配布・回収
紙またはWEB上でストレスチェックの調査票(57項目の「職業性ストレス簡易調査票」が一般的)に回答してもらいます。
結果の評価・通知
産業医等の実施者が結果を評価し、本人に通知。高ストレス者には面接指導の案内をします。
高ストレス者への面接指導
高ストレスと判定された従業員が希望した場合、産業医が面接指導を実施。就業上の配慮が必要か判断します。
集団分析・職場環境改善
部署単位でストレス状況を集計・分析し、職場環境の改善に活用します(10人以上のグループが対象)。
労働基準監督署へ報告
実施後、所轄の労働基準監督署に実施報告書を提出します(50人以上の事業所のみ)。
産業医の役割
ストレスチェックにおける産業医の主な役割は以下のとおりです。
- 実施者または共同実施者として、ストレスチェックの実施に関与する
- 高ストレス者の面接指導を行い、就業上の配慮が必要か判断する
- 集団分析の結果をもとに、職場環境改善の提言を行う
- 衛生委員会でストレスチェックの実施計画・結果について意見を述べる
ストレスチェックの実施者は産業医に限らず、保健師や一定の研修を修了した看護師・精神保健福祉士なども担うことができます。ただし、高ストレス者への面接指導は医師(産業医)が行う必要があります。面接指導が発生する事業所では、産業医との契約が実質的に必要です。
実施しなかった場合の罰則・リスク
50人以上の事業所には、ストレスチェックの実施結果を労働基準監督署に報告する義務があり、報告を怠ると50万円以下の罰金の対象となります(労働安全衛生法第100条・第120条)。実施しなかったこと自体に直接の罰則はありませんが、実施しなかった場合も報告書の提出は必要です。
労働基準監督署の定期調査や、従業員からの申告により未実施が発覚するケースがあります。また、メンタルヘルス不調による労働災害が発生した場合に、ストレスチェックの未実施が企業の安全配慮義務違反として問われることもあります。
【最新】50人未満の事業所にも義務化|2028年4月1日施行
2025年5月14日、「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」が公布され、これまで努力義務だった従業員50人未満の事業所にもストレスチェックの実施が義務化されることが決まりました。
施行日は「公布から3年以内に政令で定める日」とされていましたが、2026年6月10日に公布された政令(令和8年政令第195号)で、2028年4月1日に正式に決まりました。ストレスチェックは「1年以内ごとに1回」の実施なので、施行日に一斉に行う必要はありませんが、施行後1年以内に初回を実施できるよう準備しておく必要があります。厚生労働省は2026年2月に「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表しています。
義務化の背景
精神障害による労災支給決定件数は年々増加しており、2025年度は1,082件と7年連続で過去最多を更新しました。50人未満の小規模事業所でも従業員のメンタルヘルス対策の強化が急務とされたことが、今回の法改正の主な背景です。
50人未満の企業が今からすべきこと
施行まで残り1年半ほどです。今から以下の対応を進めておくことをおすすめします。
- ストレスチェックの実施体制(実施者・外部委託先)の検討
- 産業医・顧問医との契約(高ストレス者への面接指導に医師が必要)
- 実施規程(社内ルール)の作成と、社員の意見を聴く機会の確保(衛生委員会がない場合は職場の会議など)
義務化が始まってから慌てて対応するより、今から産業医と契約し体制を整えておく方がスムーズです。
外部委託が推奨される理由や委託先の選び方は「50人未満のストレスチェック義務化(2028年4月)に向けて|外部委託の選び方と準備」で詳しく解説しています。
よくある疑問
ストレスチェックの結果を会社が見ることはできますか?
個人の結果は本人の同意なく会社が閲覧することはできません。ただし10人以上の部署・グループの集団分析結果は、個人が特定されない形で会社に提供できます。この集団分析を職場環境改善に活用することが制度の重要な目的のひとつです。
高ストレス者が面接指導を希望しない場合、会社はどうすればよいですか?
面接指導の申出はあくまで本人の任意であり、強制することはできません。希望しない場合でも、会社として申出の機会を案内したことを記録しておくことが重要です。継続的に高ストレスが続く場合は、管理職からの声かけやラインケアで支援する方法もあります。
ストレスチェックの実施を外部に委託することはできますか?
はい、ストレスチェックの実施は外部の専門機関(EAP会社・医療機関・産業保健機関など)に委託することができます。ただし実施者(産業医・保健師など)の関与が必要であり、高ストレス者への面接指導は医師(産業医)が行う必要があります。
まとめ
ストレスチェック制度の重要なポイントをまとめます。
- 現在は常時50人以上の事業所に年1回以上の実施義務がある
- 高ストレス者への面接指導は産業医が実施する
- 実施結果の報告を怠ると50万円以下の罰金の対象になる
- 2028年4月1日から、50人未満の事業所にも義務化が拡大される(施行日は2026年6月の政令で決定)
「ストレスチェックをどう進めればいいかわからない」「産業医がいないので面接指導ができない」という企業様も、お気軽にご相談ください。